シャワーのように情報を浴びる中で、バランス感覚を失いそうになったので読みました。
この本を読むと、
太る理由から正しいやせ方まで、肥満をめぐる疑問を一挙に解決!
できますよ。(帯より) とはいえ、
BMI16.8の私が知りたかったのは、太る理由でも正しくやせる方法でもなく、情報との向き合い方と発信をする際の姿勢の部分です。
何がよくて、わるいのか。何が正しくて、まちがっているのか。
宗派のごとく様々な考え方が存在していて、それっぽく説明されたらあたかもそれが正しいように思えてくることもあるんですよね。
あと、「それ、ちがうよ〜」って伝えるのが、あんまりうまくないです。
この本を読んで、本当は矛盾がある情報を正しいように思えてくるのは思慮が浅かったからだということに気づきました。で、思慮を深めるための着眼点を知り、相手を傷つけず萎縮させずに発信するためのコツもわかる本でした。
ダイエット商材にお金を使ってこられた方なら、怪しい商材に騙されなくなるだろうし、講師業をされている方であれば、公平中立にNOを伝える方法の参考になるんじゃないかなあと思います。
ということで、紹介します!
買って読んだ決め手:あとがき
ダイエット本のたぐいが無数に出版されているが、その多くは、単に個人的な経験を綴ったものにすぎない。
したがってそれらの本で紹介されるダイエット法は、読んだ人にも有効とはかぎらず、それどころか、まったくナンセンスだったり、ときには有害でさえある。
本書は、そのようなたぐいの話とは一線を画し、学術論文と同じくらい新しく、間違いがなく、役にたつ情報を、わかりやすくまとめたつもりである。特に読者に間違った知識を与えないよう、全身全霊を打ち込んだ。
そんなわけで、原稿を書くときはいつも緊張の連続となる。そのせいか、筆者はやせていて、ちょっぴり太りたいと思っている。
あとがきの最後に書かれています。しびれました。
健康的にやせるための知識を、間違った知識を与えないよう魂を込めて書いたよ。
と、はっきりと宣言されているのです。
著者の岡田先生はやせているという点からも、過去に太っていた状態からやせられたメソッドを知って欲しくて執筆されたというよりも、情報を公平にフェアに捉えるための視点を持ってほしくて、この本を書かれたのかなとも感じます。
学術論文と同じくらいに書く?:岡田正彦先生はこんな方
学術論文と同じくらい新しく、間違いがなく〜・・・とあとがきに書かれています。
私は大学時代に卒業研究を進める際にも、食品メーカーの研究職時代にも論文に触れてきましたが、論文を読むのは簡単なことではありませんでした。
数が半端なく多いですし、信憑性の低いものもあるので、探し出すのもひと苦労します。
どんな先生なのだろう・・・? 調べてみました。
【ご経歴】
新潟大学名誉教授 医学博士。
同大学医学部教授の傍ら、病院で予防医学の外来を担当。米国学会誌IEEE Transactions on Biomedical Engineering副編集長、国内学会誌「生体医工学」編集長を務め、1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。
臨床も学術論文を読み解くのもプロ中のプロ、大先生ですね!
本編の内容
私は本を読みながら、新しい発見があると線を引いています。その中でも重要だと感じたところには付箋をしています。
この本の第1刷は2006年に発行されており、情報の新しさには期待していませんでした。ところが、今主流になっていることに対する知識もありましたし、岡田先生の情報を多角的に見る思考が非常に学びになりました。
結果、1冊200ページちょっとにも関わらず、線だらけで付箋多めです。
人はなぜ太るのか?肥満を科学するについて
炭水化物vs脂肪 どちらが肥満につながるか?
・人間が炭水化物を必要とするのは、①エネルギー源 ②遺伝子(DNA、RNA)の材料だから。脂肪を必要とするのは、①細胞やホルモンの材料 ②エネルギー源 だから。
・体内に蓄積される1gの炭水化物中には2/3gの水分が含まれるが、中性脂肪にはいっさい水分はまじっていない。つまり、同じ重さの炭水化物とくらべて、中性脂肪はエネルギー源としての密度が3倍濃いことになる。1gあたり炭水化物4kcal、脂肪9kcalのため、実際には6倍以上の差がある。
・中性脂肪にはほとんど酸素が含まれていない。エネルギー燃焼とは「物質と酸素が結合して熱と光を発する反応」であることから、酸素を含まない中性脂肪は高いエネルギーを温存した状態といえる。つまり脂肪は長期的に安定で、保存用エネルギー源としては最高なのである。
※一部抜粋
簡単にまとめると、
大前提として、炭水化物も脂肪も人間にとってどちらも大切な栄養素である。
炭水化物と脂肪のどちらにもエネルギー源としての役割はあるけれど、燃えやすさに差がある。炭水化物の方が燃えやすく、脂肪は蓄積されやすい。
卵1日1個までvsもっと食べてよい コレステロールの考え方
・卵を毎日20〜30個ずつ食べる88歳男性がいた。この男性を調べると病気らしい病気はなく、心電図に少し変化があっただけで検査値をみても全くの健康だった。この男性に興味を持ったコロラド大学の研究者たちが、同じ状況を再現し、結果をくらべてみた。
・分析の結果、研究者たちとは異なり、この男性は排出されるコレステロールの量が通常の二倍をはるかにこえていることがわかった。
この男性の場合、食事からとったコレステロールのほとんど全てが胆汁に変換されていたのである。胆汁は消化液であるため、多すぎて困ることはない。そのためこの男性は、いくら卵を食べても健康でいられたのである。
・コレステロールが排出される割合には、体質の違いがあることがわかったことになる。同じ食事をしていても、血管にたまるかどうかは、人によって大きく異なるわけである。
※一部抜粋
まとめると、
食事由来のコレステロールが血管にたまるかは、あの人の話やあのデータがあなたにもあてはまるとは限らない。
肥満をはかるには?
理想体重を求める式の変遷
【昔】(身長−100)×0.9 ※150cm以下の場合は×0.9をしない
実はこの計算式の根拠はあまりはっきりしなかった(なんてこったー!)
↓
【今】BMI
身長と体重の比だけでは決まらないため、補正したがBMI。日本人の理想のBMIは22。
理想のBMIが「22」の根拠になったデータやそこからの考察、BMIも万能ではない事例なども書いてあります。ぜひ読んでみてほしいなあと思います。
他にも、
・あてにならない体脂肪率
・ウエスト周囲長が病気の予防には有効
・正しい体重のはかり方
かなり参考になりました。
全てを紹介しているとえらいことになるので、この辺でやめておきます。
他に書いてあること
・運動療法
・薬
・サプリメント
について書かれています。
運動療法に関しては、「汗をかくくらいの速さで歩こう」について、こんな風に述べられています。
しかし汗をかくかどうかは季節によっても違うため、加減が難しい。
体重や足の長さでも違ってくるはずである。
そこで、適度な速さとはどんなものかを、科学的に考えてみたい。
もうこれ、爆笑しました。
私は季節によってちがうよな〜くらいのペラッペラな思考で、「足の長さ」までめぐりませんでした。尊敬の意とした爆笑です。
適度な速さが重要な理由と、あなたにとっての適度な速さを求める方法が科学的に書かれています。ぜひ読んでみてほしいなあと思います。
理屈不要な方は、エピローグだけでOK!
最初に書きましたが、私が本書を読んだ理由は、情報との向き合い方と主張をする際の姿勢を学びたかったからです。
そこに興味がない時は、正しいやせ方をまとめたエピローグだけで十分ですよ。
この本の魅力
かんたんなところです。
学術論文に基づいた本には、データがそのまま引用されていたり、生化学や生理学の基礎は知っている前提で書かれているものもあったりで、若干読みづらかったりします。
この本は、その部分が噛み砕かれていて、とっつきやすかったです。
まとめ:情報の取捨選択をする目を鍛える、そうすれば時間と努力とお金の最適化ができる
科学的な根拠に基づく考察の部分が非常に大切だなと感じました。
考察の部分が自分には見えていなかった物の見方であり、それをインストールすることによって、アンテナの数が増えました。読む前よりもずっと、情報の目利きができるようになったと思います。
騙されることも、学びがあるので悪くないんですけどね。見抜けなかった自分にがっかりすると、セルフイメージも下がりかねないですし、この時間と努力を別のことに使えたなーって思うと悔しいです。
個人がモノ・サービス・情報を当たり前のように売る時代。
多角的な物の見方をする思考に触れるのは、時間と努力とお金を不要なところに費やさないという最大の防御となり、別の言いかたをすると、最適なところへ投資できるという最高の攻めになると思います。
↑自分の胸に刻み込んでいる
以上、おわり!