光が映る海の向こう、
観覧車が静かにまわっている。
ガラスの塔と電光の空は、
未来を映すようでいて、
夢を手に取るふりをして、
その手はそっと、ポケットに仕舞い込まれる。
坂の下では、パンの自販機がまわる。
「10円安いあんパン、まだ残っているかな?」
握りしめたポケットの中、
明日のぶんの希望を、そっと数える。
空調が効いた段差のない学び舎と、
窓を全開にした壁面が疎な学び舎と。
横浜は、ふたつの貌をもつ。
煌びやかさと、ささやかな現実、
近代性と下町性、
同じ海風を吸い、同じ時間を泳いでいる。
まるで、双子のようだ。
どちらかが光れば、もう片方は影になり、
どちらも失えば、この都市の心臓は止まる。
だから今日も、
観覧車は光り、自販機は鳴る。
ヨコハマが廻るかぎり、
双子はどちらも、生きている。